「1両は何円?」3つの映画で全然違っているという話

どーも、還暦少年です。
ここ数年、「武士の家計簿」「殿、利息でござる」「決算!忠臣蔵」「引っ越し大名」など、お金に着目した(江戸時代の)時代劇がヒットし、日本アカデミー賞にノミネートされるなど評価も高いですね。

ただ、気になるのは、そこで交わされるお金の単位、1両がいくらなのかということ。

元禄小判 1両 (画像はパブリックドメイン)

しかも、これらの映画で示されている1両の現代における価値が、(ほぼ同時代の話なのに)映画によって全然違っているのですね。証拠の画像付きなので、ちょっと見て欲しいです。

映画(予告編)で示された「1両は何円?」

引っ越し大名

原作:引っ越し大名三千里(土橋章宏)
監督:犬童一心
出演:星野源、高橋一生、高畑充希、小澤征悦、濱田岳、西村まさ彦ほか
配給:松竹
年度:2019年
1両=7.5万円 (2万両=15億円より)

決算!忠臣蔵

原作:「忠臣蔵」の決算書(山本博文)
監督:中村義洋
出演:堤真一、岡村隆史、濱田岳、横山裕、荒川良々、妻夫木聡、大地康雄ほか
配給:松竹
年度:2019年
1両=12万円(790両=9500万円より)

殿、利息でござる

原作:無私の日本人(磯田道史)
監督:中村義洋
出演:阿部サダヲ、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、千葉雄大、羽生結弦ほか
配給:松竹
年度:2016年
1両=30万円(1000両=3億円より)

このように「引っ越し大名」と「殿、利息でござる」では4倍も違っています。
こんなに違っているのに、3作品はいずれも松竹の映画です。しかも、「決算!忠臣蔵」と「殿、利息でござる」は監督が同じという…

もう、何が何やら…

「1両は何円?」か

江戸時代の1両がいまの価値でいくらくらいなのか、原作含めいくつかの本を読んで比較してみました。

「引っ越し大名」は米の価値がベース

江戸時代は、米本位経済で、米が武士の俸給の基準でした。よって、米の当時の価値をベースに考えて、今と比較してみます。

1両は、米1石(150kg)の価格とだいたい同じとされています。(「武士の家計簿」「江戸の家計簿」より)

いま、お米屋さんで買うお米が、5kg=2,500円くらいなので、1両の価値は、2,500×(150÷5)=7.5万円となります。これは「引っ越し大名」の説と一致します。

「決算!忠臣蔵」は、物価ベース

江戸時代は、米の価格が今よりずっと高かった時代です。
他のいろいろなものの物価を基準に、1両の価値を考えてみます。

江戸時代は、蕎麦は(二八そばというように)16文で安定していました。屋台の蕎麦が、いま480円くらいとすると、1両は4000文なので、480:16=X:4000 で、Xの値を求めると、X=12万円となります。これは「決算!忠臣蔵」の説と一致します。

「殿、利息でござる」は、大工さんの賃金ベース

平成の司馬遼太郎、こと、テレビでも大活躍の磯田道史さんは、出世作となった「武士の家計簿」以来一貫して、1両=30万円と主張されています。

根拠は、江戸時代の大工の見習いが、1両稼ぐのに必要な日数が20日だったことです。現代の大工見習の日当が、1万5千円ほどなので、1両は、1.5万円×20=30万円 ということになります。

まとめと私見

1両が、いまの価値で 7.5万円、12万円、30万円と3つの説があり、それぞれには根拠があります。

映画では言い切っちゃってますけど…、江戸時代の通貨が、いまいくらかについては、考え方の違いで、いかようにも考えられます。正解はないと思います。
加えて、江戸時代はそれなりに安定していましたが、2百数十年も続いたわけで、初期と終わりでは大分様子が違うし、比較は難しいようです。

ここから私見:
私たちが海外旅行に行く場合を考えると、先ず為替レートで、次に全般的な物価で比較するのではないでしょうか?

たとえば、タイに行くと、はじめは1バーツ=3.3から3.4円のレートで考えて、ものの値段を計算して、買い物の際に安いと感激します。

が、いろんな買い物をして慣れてくると、1バーツ=10円くらいの感覚で日本と比較するのが妥当だと感じるようになります。これは、長期旅行者や駐在員の方に共通の感覚かと思います。

テレビでも、1両12,3万円で紹介されることが多いと見受けられますし、そんなわけで、一般的な物価の感覚=1両=12万円程度(「決算!忠臣蔵」の基準)で考えれば良いように思われます。

磯田説(1両=30万円)だと、蕎麦の値段(16文)が、1200円になります。もりやかけの値段だと、神田の「藪蕎麦」でも、池波正太郎先生が贔屓にされた「まつや」といった名店でも、700円しないほどですので、たかがといってはなんですが、屋台の蕎麦が1200円というのは、高すぎて感覚に合わない気がします。

そもそも、今と江戸時代では、労働の生産性がまったく違うわけです。昔は1日に1しか出来なかったことが、道具が発達して、数倍は出来るようになっています。それを無視して、同じ職種だからといって、同じ賃金ベースで比較するのは、疑問が残りますね。

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